1型糖尿病は主に自己免疫によっておこる病気です。
自分の体の免疫異常で自分自身のインスリン工場である膵臓のβ細胞を破壊し発病します。
皆さんは1型糖尿病をご存知でしょうか?
1型糖尿病(昔はIDDM、インスリン依存型糖尿病、小児期に起こることが多いため小児糖尿病とも言われていました)は、主に自己免疫によっておこる病気で、自分の体の免疫異常で自分自身のインスリン工場である膵臓のβ細胞を破壊し発病します。
インスリンが体から無くなると糖を体に取り込むことできず、血管の中に糖があふれます。この状態が高血糖と言われ、高血糖状態が続くと、様々な形で血管の壁に溜まり、糖尿病特有の合併症につながります。
そのため 1型糖尿病を発症すると、膵臓移植や膵島移植などの特殊な治療を除けば、生涯にわたって毎日数回のインスリン自己注射またはインスリンポンプと呼ばれる医療機器によるインスリン補充を続ける以外に治療法はありません。
1型糖尿病は生活習慣病でも、先天性の病気でもありません。
遺伝して家系の中で何人も発病することもまれです。もちろん1型糖尿病が他人にうつることはありません。
また大人は1型糖尿病を発症しないと思われていますが、英国首相(2018年現在)のテリーザ メイ氏が56歳で1型糖尿病を発症した事が示すように、約半数は30歳以降に発症するといわれています。
厚生労働省の研究班の報告では日本の1型糖尿病患者の総数は10~14万人とされ、有病率は約0.1%と言われており、1000人に1人が1型糖尿病をもちながら生活しています。
北欧と比べると日本の1型糖尿病患者は小児では約1/30、成人では約1/3と言われており、まだまだ認知度が低いのが現状です。
姫路市だけでも数百人の1型糖尿病患者さんがおられますので、もしかすると皆さんのお知り合いにも1型糖尿病患者さんがおられるかもしれません。
1型糖尿病では膵β細胞の破壊の程度に違いがあります。
急性発症1型糖尿病の患者さんでは、自分のインスリンが全く無くなってしまった方とほんのわずかではありますが残っている方とがおられます*1。
自分のインスリンが全く無くなってしまうと血糖値が変動しやすく(不安定型糖尿病)、専門医をもってしてもコントロールすることが困難になります。
注射するインスリンが少しでも多過ぎると低血糖、少しでも足りないと逆に高血糖になり、ひどい場合には低血糖による昏睡と高血糖による昏睡のどちらも起こすことになります。
一方、自分のインスリンが僅かながらも残っている方では血糖のコントロールが安定化します。
自分のインスリンは時々刻々の血糖変化に応じて自然に増えたり減ったりしてくれますから、外から注射するインスリンの量が多過ぎる場合には自分のインスリンが減少し、少な過ぎる場合には増加して狭間を埋めてくれる、いわば緩衝剤としての作用を発揮してくれるからです。
たとえ量はわずかでも、自分のインスリンが残っていると注射で投与するインスリンの過不足が緩衝されて、コントロールが安定化するのです。
急診断基準は空腹時あるいはグルカゴン負荷後C ペプチド<0.1 (ng/ml)です。
インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病に至る期間
1型糖尿病の進行はタイプで異なります。
身体的にも社会的にも対応に格別の配慮が必要
1型糖尿病でインスリン注射をやめてしまうとたちまち死に直結することは、膵臓を手術で全部摘出した場合と同じで、腎不全の方が人工透析をやめてしまうと死に直結することに類似しています(図1)。
災害時には更に大きな問題で、大震災で被災された1型糖尿病の方々に命綱であるインスリンを各方面の懸命の努力で調達・供給したことは記憶に新しいところです。
1型糖尿病のなかでも特にコントロールが難しく、身体的にも社会的にも対応に格別の配慮が必要な「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」の方々の診断と適切な対応がなされることが望まれます。