GLP1の減量効果比較
(注意)第1世代GLP1、第2世代GLP1という呼称は理解しやすくするための
当サイトでの呼称であり、正式名ではありません。
第3世代
GLP1
(+GIP)
第2世代
GLP1
【成分名】 | セマグルチド |
【商品名】 | リベルサス オゼンピック ウゴービ |
【特 徴】 | 第1世代と比較し、効果が強く副作用も多くはない。 経口薬と週1回注射。 リベルサス<オゼンピック<ウゴービの順に強くなる。 |
第1世代
GLP1
【成分名】 | リラグルチド |
【商品名】 | ビクトーザ=サクセンダ |
【特 徴】 | 使用量とともに効果は増えるが、少量では効果が弱い。 1日1回注射。 |
【成分名】 | デュラグルチド |
【商品名】 | トルリシティ |
【特 徴】 | 減量効果が少なく、減量治療に使用しない。 血糖コントロールに使用される。 週1回注射。 |
マンジャロ(GLP1+GIP)はオゼンピック(GLP1)より費用対効果が優れている。
他GLP1からのマンジャロへの切り替え時は、新規使用より副作用が少ないと考える。
私見
リラグルチド3.0mg/日はセマグルチド0.35‐0.7mg/週とほぼ等しいと推測できる。
抗肥満薬としてはリラグルチドよりセマグルチドが効果が高いと言える。
対象 肥満症(BMI39.3)
期間 52週
プラセボ | -2.3% |
リラグルチド 3.0mg/日 |
-7.8% |
セマグルチド(注射)0.35mg/週 | -7.8% |
セマグルチド(注射)0.70mg/週 | -8.6% |
セマグルチド(注射)1.40mg/週 | -11.6%(p<0.001) |
セマグルチド(注射)2.10mg/週 | -11.2%(p<0.001) |
セマグルチド(注射)2.80mg/週 | -13.8%(p<0.001) |
Lancet. 2018 Aug 25;392(10148):637-649.
対象 肥満症(BMI37.5)
期間 68週
リラグルチド 3.0mg | -6.4% |
セマグルチド(注射)2.4mg | -15.8%(p<0.001) |
JAMA 2022;327:138-150
私見
抗肥満薬としてはセマグルチド2.4mgよりチルゼパチド10-15mgが
効果が高い可能性がある
対象 肥満症(BMI37.9)
期間 68週
プラセボ | -2.8% |
セマグルチド 2.4mg | -15.6%(p<0.001) |
N Eng J Med.18;384:989,2021 国際共同第III相試験(NN9536-4373試験)
対象 肥満症(BMI38.0)
期間 72週
プラセボ | -3.1% |
チルゼパチド 5mg | -15.8%(p<0.001) |
チルゼパチド 10mg | -19.5%(p<0.001) |
チルゼパチド 15mg | -20.9%(p<0.001) |
N Engl J Med.21;387(3):205-216,2022
私見
セマグルチド(注射、経口)の体重あたりの血中濃度は日本人、日本人以外のアジア人、欧米人で大きな違いはない。また血糖、体重、副作用はすべて血中濃度依存と考えられている。よって体重によってセマグルチド注射、経口を使い分ければよいと考えられる。
私見
経口セマグルチドの血中濃度は注射セマグルチドに換算すると14mg/日(経口)が0.5mg/週(注射)であると推測される。
私見
私見:セマグルチド20-40mg/日(経口)が1.0mg/週(注射)であると推測される。
対象 2型糖尿病
期間 26週
プラセボ | -1.3% |
セマグルチド(経口)2.5mg/日 | -2.2% |
セマグルチド(経口)5mg/日 | -2.9% |
セマグルチド(経口)10mg/日 | -5.2% |
セマグルチド(経口)20mg/日 | -6.5% |
セマグルチド(経口)40mg/日 | -7.6% |
セマグルチド(注射)1.0mg/週 | -7.2% |
JAMA. 2017 Oct 17;318(15):1460-1470
対象 2型糖尿病
期間 68週
セマグルチド(経口)14mg/日 | -4.6% |
セマグルチド(経口)25mg/日 | -7.0% |
セマグルチド(経口)50mg/週 | -8.3% |
PIONEER PLUS(press release)
私見
セマグルチドは注射・経口ともに1世代GLP1よりも減量効果が高い。
対象 2型糖尿病(BMI33.0)
期間 26週
リラグルチド1.8mg | -3.2% |
セマグルチド(経口)14mg | -4.7%(p=0.0003) |
Lancet. 2019 Jul 6;394(10192):39-50 PIONEER 4
対象 2型糖尿病(BMI33.0)
期間 30週
リラグルチド 1.2mg | -2.0% |
セマグルチド(注射)1.0mg | -6.0%(p<0.001) |
Diabetes Metab. 2020 Apr;46(2):100-109 SUSTAIN 10
私見
リベルサス(経口セマグルチド)は用量依存的に効果が増える。
3mgは2%未満、7mg2%程度、14mgは4%程度の減量効果。
PIONEER1 26週 |
PIONEER3 78週 |
PIONEER4 26週 |
PIONEER8 52週 |
PIONEER9 52週 |
PIONEER10 52週 |
SUSTAIN10 30週 |
平均 | ||
2世代 | リベルサス 3mg |
-1.7% | -2.0% | -0.9% | -0.0% | -0.0% | -0.9% | ||
リベルサス 7mg |
-2.6% | -3.0% | -2.3% | -0.8% | -1.2% | -2.0% | |||
リベルサス 14mg |
-4.2% | -3.5% | -4.7% | -4.3% | -4.1% | -2.2% | -3.8% | ||
オゼンピック 1.0mg |
-6.0% | ||||||||
1世代 | トルリシティ 0.75mg |
+1.4% | |||||||
ビクトーザ 0.9mg |
+0.5% | ||||||||
ビクトーザ 1.2mg |
-2.2% | ||||||||
ビクトーザ 1.8mg |
-3.2% |
参考文献
JAMA. 2019 Apr 16;321(15):1466-1480. PIONEER3
Lancet Diabetes Endocrinol.
2020 May;8(5):377-391. PIONEER9
Lancet Diabetes Endocrinol. 2020 May;8(5):392-406.
PIONEER10
Diabetol Int. 2020 Jan 4;11(2):76-86.
私見
セマグルチド1.0mg<チルゼパチド5mg≦セマグルチド2.4mg≦チルゼパチド10mg
対象 2型糖尿病(BMI36.0)
期間 68週
プラセボ | -3.3% |
セマグルチド1.0mg | -7.2% |
セマグルチド2.4mg | -9.9% |
Lancet 2021; 397: 971–84 国際共同第III相試験(NN9536-4374試験)
対象 2型糖尿病(BMI34.2)
期間 40週
セマグルチド1.0mg | -6.6% |
チルゼパチド5mg | -8.4% |
チルゼパチド10mg | -10.9% |
チルゼパチド15mg | -13.2% |
N Engl J Med. 2021 Jun 25.
ネットワーク解析ではセマグルチド2.0mg≦チルゼパチド5mg<チルゼパチド10mg
Diabetes Obes Metab.2022 Sep;24(-):1861-1868.
2023年末の適応疾患の見込み(海外) | 肥満症の適応 | 2型糖尿病の適応 |
リラグルチド (注射) |
セマグルチド (経口) |
セマグルチド (注射) |
チルゼパチド (注射) |
肥満症への 減量効果 |
2型糖尿病への 減量効果 |
ビクトーザ0.9mg | リベルサス3mg | 2%未満 | |||
ビクトーザ1.2mg | リベルサス7mg | オゼンピック/ウゴービ 0.25mg |
2.0% (ビクトーザ1.2mg) 2.0% (リベルサス7mg) |
||
ビクトーザ1.8mg | 3.0% (ビクトーザ1.8mg) | ||||
サクセンダ3.0mg | リベルサス14mg | オゼンピック/ウゴービ 0.5mg |
6.4% (サクセンダ3mg) |
3.8-4.7%(リベルサス14mg) | |
マンジャロ 2.5mg |
|||||
リベルサス20-25mg (未承認) |
オゼンピック/ウゴービ 1.0mg |
7.0%(リベルサス25mg) 6.6-7.2%(オゼンピック1.0mg) |
|||
リベルサス40-50mg (未承認) |
ウゴービ 1.7mg |
マンジャロ 5mg |
15.0% (マンジャロ5mg) |
8.3%(リベルサス50mg) 7.4-8.3%(マンジャロ5mg) |
|
ウゴービ 2.4mg |
マンジャロ 7.5mg |
15.6% (ウゴービ2.4mg) |
9.9%(ウゴービ2.4mg) | ||
マンジャロ 10mg |
19.5% (マンジャロ10mg) |
10.7-10.9%(マンジャロ10mg) | |||
マンジャロ 12.5mg |
|||||
マンジャロ 15mg |
20.9% (マンジャロ15mg) |
13.2-13.6%(マンジャロ15mg) |
紹介文献より高部作
文献によって背景が異なるため厳密には比較できないが、できるだけ背景の似た試験を集めている。
あえてプラセボとの差でなく、試験期間中の純粋な減量率で比較しているのは、プラセボがない論文が含まれているためである。
緑色は直接のデーターではなく、薬剤血中濃度からの推測したものである。
GLP1の減量効果は肥満症と2型糖尿病で異なる印象。肥満症への効果は2型糖尿病への効果の約1.5倍である。
理由はわからないが、肥満度の違い、血糖改善による体重増加、2型糖尿病特有の性格などの影響が推測される。
(2023/11/22更新)
ウゴービ(2世代GLP1)が肥満症へ保険適応が決まりました。
ただし、保険適応は学会教育関連施設(基幹病院など)のみで、
クリニックなどアクセスしやすい医療機関では健康保険適応になりませんでした。
また、保険適応になっても、6か月以上の食事療法の為の通院、
2カ月に1回以上の管理栄養士からの栄養指導を受けた後でしか、使用できず、
5%以上の程度の減量を認めた時点で薬剤中止を検討しなければならないため、
保険適応では大きな減量効果を期待することが難しい内容となりました。
~3世代GLP1の適応は2型糖尿病のみ~
2023年末~2024年末に本邦で保険適応される予定ですが、施設基準がかなり厳しく、
診療所での使用が認められず、基幹病院のみになるかもしれません。
ウゴービ皮下注添付文章より
ウゴービ皮下注(週1回製剤)
・GLP1により食欲抑制し、体重減少作用を示します。
・次の条件の人に処方できます。
条件:(1)and(2)and(3)もしくは(1)and(2)and(4)
(1)肥満症
(2)高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを有し、食事・運動療法で十分な効果が得られない
(3)BMIが 27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
(4)BMIが 35kg/m2以上
健康障害とは:肥満症診療ガイドライン 2016 で定義される肥満症の診断基準に必須の11の疾患をさす
(1)耐糖能障害or2型糖尿病
(2)脂質異常症
(3)高血圧
(4)高尿酸血症・痛風
(5)冠動脈疾患
(6)脳梗塞
(7)非アルコール性脂肪性肝疾患
(8)月経異常・不妊
(9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
(10)運動器疾患
(11)肥満関連腎臓病
~肥満症への適応BMIを計算~
リベルサス、オゼンピック、マンジャロは肥満症の保険診療適応なし
ウゴービは2023年5月現在国内未発売
リベルサス 14mg |
オゼンピック /ウゴービ 1.0mg |
ウゴービ 2.4mg |
マンジャロ 15mg |
|
GLP1単独の減量効果 | 約5% | 約10% | 約15% | 約20% |
GLP1治療で BMI22-25になる元のBMI |
23.2-26.3 | 24.4-27.5 | 25.9-29.4 | 27.5-31.3 |
GLP1にSGLT2阻害薬追加*しても BMI22-25に収まる元のBMI |
24.4-27.5 | 25.9-29.4 (※2) |
27.5-31.3 | 29.3-33.3 (※1) |
*PIONEER2でリベルサス14mgとジャディアンス25mgは同程度の減量効果を示しているため、SGLT2阻害薬の減量効果を5%と仮定した。
【表 ※1】
BMI30の方は「マンジャロ15㎎にSGLT2阻害薬を追加」した治療を受けると、平均的には6-12か月後にBMI25未満になると期待できる。
【表 ※2】
BMI27の方は「オゼンピック1.0㎎にSGLT2阻害薬を追加」した治療を受けると、平均的には6-12か月後にBMI25未満になると期待できる。
内科治療が外科治療の一部をカバーすると予想される
GLP1+アミリン合剤(CagriSema)は20-30%の減量が見込まれる
touchREV Endocrinol. 2022 Jun;18(1):35-42
日本で保険適応のあるスリーブ状胃切除術は約30%の減量効果があります。
CagriSema(第3相試験中)は20-30%の減量効果が見込まれ外科治療の一部と置き換わる可能性が示唆されています。
週1回注射。
現状最強の減量薬である。